安全に対する感性を研く

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
今月8月6日、広島は69回目の「原爆の日」を迎えました。広島平和記念資料館は、被爆の惨状を経験していない世代に、疑似体験してもらうための建物です。国内外から多くの人が訪れますが、被害の記憶が年々風化してきているように思えます。
過去に重大事故を何度も経験している三菱重工長崎造船所は、「安全伝心館」という安全教育施設を開設しました。この施設は、災害防止のポイントや対策を学ぶだけでなく、人がエラーを起こす原理を体験教育や災害事例から学び、危険予知トレーニングもできるようになっているそうです。管理者から作業者まで一人ひとりが、災害の悲惨さや辛さを心で感じ、何をすべきか「自分で気付く場」として活用され、組織として「安全感性の向上」と「安全文化の醸成」を図っています。
多くの人に食を提供している食品業にとって衛生管理が第一であるように、毎日多くの方を乗せて運行している鉄道会社にとっては「安全」が一番大切です。JR九州では、安全とサービスを組織の風土・基盤として定着に取り組み、自分たちで安全を「つくる」ことを推進しています。こちらも安全意識を植え付ける目的で、「安全創造館」という安全教育施設を開設しました。過去に起こった事故を知識として得るだけでなく、他社で起きた事故の原因や対策が分かるよう、パネル展示に工夫がなされています。
安全対策にはお金と時間と人手がかかり、いくら努力をしてもこれで大丈夫ということはありません。安全への取り組みを先駆的にされているこれらの会社では、「顧客の命を守るために安全を優先させなければならない風土」を組織の中に育てることに人材と予算を惜しみなくつぎ込み、安全に対する「感性」を高めるための教育施設まで作っています。
医療現場は命を扱うところで、多くの行為が命に直結します。現場の手順というのは、医療行為が安全に行われるため、また過去の事故を繰り返さないために作られていますが、そもそも何の事故だったのか、それを語り継ぐ人も入れ替わりが激しい医療現場ではすぐ途切れてしまいます。さらに学校ではそれぞれ専門知識については学びますが、医療安全についての教育はほとんどありません。そのため現場に入ってから、安全文化を醸成するための研修が繰り返し行われます。
語り継ぐ人は少なくなり、やがて記憶は風化します。そういう現場で「感性」を研くには、普段から5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ、院長ブログ2014年1月号参照)を徹底することが大切です。
乱雑な現場で育った職員は、「ま、いっか」「こんなことぐらい」と思うかもしれませんが、普段から5Sが出来ていれば、「これはおかしい」と自ら気付きチェックするようになるでしょう。

当院では今月「5Sの徹底」を目標に掲げています。安全は「守る」のではなく自分たちで「つくる」ものです。病棟がさらにきれいになると同時に、職員の「感性」が高まることを期待したいと思います。