目標は”持つ”より”立てる”もの
ごあいさつ

病院長
3月は「球春到来」です。高校野球の「春のセンバツ」が開催され、プロ野球も開幕しました。地元広島の古豪・広島商業は惜しくもベスト8で敗退し、広島カープも開幕連敗スタートとなるなど、勝負事はなかなかファンの思い通りにはいかないものです。しかし昨年ワールドシリーズを制覇したメジャーリーグのドジャースだけは別格でした。18日・19日に東京ドームで行われたカブスとの開幕戦を連勝し、その勢いのまま翌週も勝ち続け、開幕5連勝という最高のスタートを切りました。多くの日本人選手が出場した開幕戦では、昨年以上の“大谷翔平フィーバー”が巻き起こりました。試合が近づくにつれてワイドショーやニュース、テレビCMは大谷選手一色となり、日米のみならず台湾や韓国など多くの海外メディアも集結し、世界的に注目を浴びた開幕戦でした。
今年、自身初の開幕投手を務めた菊池雄星投手も、大谷選手と同じ岩手県花巻東高校の出身です。菊地選手が3学年上のため高校時代に一緒にプレーすることはありませんでしたが、現在はメジャーリーグでたびたび対戦しています。この二人に加えて、高校通算140本塁打の歴代最多記録を持ち、昨年のドラフトの目玉選手として話題となった佐々木麟太郎選手も花巻東高校の出身です。彼は結局日本のプロ志望届は提出せず、世界屈指の名門大学であるスタンフォード大学へ進学し、文武両道の生活を送っています。
次々と世界で活躍する選手を輩出する花巻東高校野球部の佐々木洋監督は、「夢は持っているだけではダメ。目標を具体的に立てることで初めて実現に近づく」と語り、人が育つカギは「目標設定」にあると断言しています。自らも野球に打ち込んでいた佐々木監督ですが、 大学時代に戦力外通告を受けて大きな挫折を経験し、孤独感と虚しさに苛まれていた時期がありました。
佐々木監督は、「なりたい自分」と「実際の行動」のズレに気づき、夢を現実にするためには、具体的な目標設定と行動計画が不可欠だと学びました。花巻東高校ではこの教えを指導の軸に据え、生徒たちにも目標設定の重要性を説いています。技術指導は専門のコーチに任せ、監督自身は戦術と目標設定に集中し、「夢を叶えるための心構え」、「高い目標設定」、「目標達成までの具体的な行動計画」まで包括的にサポートし、選手育成に徹しています。
菊池投手はあるインタビューで活躍の秘訣について尋ねられ、「特別な練習をしたわけではない。監督から目標設定の仕方を学んだから」と答えています。生徒たちは、一人ひとりが高い目標を設定し、それを達成するために必要な行動を逆算して計画し、毎朝「その日にすべき行動」を明確にする時間を設けています。漠然とイメージするだけでなく、言葉にして目に見える形に書き出すという「思考のプロセス」こそが、やるべきことを具体的に考え、行動を変える鍵となっているのかもしれません。
佐々木監督は、「野球を勝たせて甲子園に連れて行くことが私の仕事ではなく、その後の60年以上の人生を勝ち抜く術を教えることが自分の使命だ」と語っています。来月、当法人にも多くの新人が入社してきますが、新人研修では技術教育以上に社会人としての人間教育の方が重要です。その中で、「目標は漠然と持つのではなく、言葉にして具体的に行動計画として『立てる』ことが大切」であることも伝えていきたいと思います。
