未来へ伸びる根
ごあいさつ
病院長
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お正月にお雑煮を食べながら箱根駅伝を見ていると、新たな一年の始まりを実感します。今年も青山学院大学が圧倒的な強さを見せ、大会新記録で優勝しました。この11年で8度目の優勝を果たし、まさに黄金期を迎えています。その強さの背景には、優れた選手のリクルート、科学的トレーニング、緻密な戦略と指導力、そして勝負強さといった多くの要素が組み合わさっているのでしょう。特に「青トレ」と呼ばれる基礎的なトレーニングは、ケガをしにくい強い身体を作り上げることで知られています。
箱根駅伝を観る楽しみのひとつに、サッポロ生ビール黒ラベルの「大人エレベーター」のCMがあります。俳優の妻夫木聡さんが架空のエレベーターに乗り、押したボタンの階数に応じた年齢の素敵な大人と語り合う内容です。今年は40階、ゲストは元サッカー日本代表の長谷部誠さんでした。「天才は存在しますか?」という問いに対し、長谷部さんは次のように答えていました。
長谷部さんは、ドイツのブンデスリーガで17年間・380試合以上プレーし続け、40歳までトップレベルで活躍し続けました。並外れた才能を持つ選手を多く見てきたと思いますが、最終的に長く活躍するのは、身体も心も基本がしっかりしている人、という意味なのでしょう。
当院の駐車場の入口には、大きなクスノキがそびえ立っています。長い年月をかけて地中に深く根を張り、春には新芽を吹き、夏には青々とした葉を茂らせ、秋には風に揺れながら香りを漂わせます。一見変わらないように見えても、常に成長を続けています。当法人のシンボルツリーであるこのクスノキは、開業以来、我々職員や多くの患者さんたちを見守ってきました。
先日、ある90代の患者さんが退院時のアンケートで、「庭の管理が良くできていた。前方の古木から精をもらったようで元気が出た。ありがとうございました。」とこのクスノキのことを褒めてくれました。クスノキは古くから疲れた体を癒し、元気を取り戻す力があるとされています。その樹から抽出される樟脳(カンフル)は、古くから医薬品として使われてきました。また、日本各地の神社では御神木として祀られることも多く、広島では被爆を乗り越えて今なお青々とした葉を茂らせるクスノキが復興の象徴になっています。太い幹を持ち、枝を大きく広げて空に向かっている姿は、入院患者さんにとって心のよりどころとなる存在だったようです。
リハビリには時間がかかり、途中で思うように進まないこともたくさんあるでしょう。しかし、大地にしっかりと根を下ろしたクスノキが少しずつ成長していくように、基礎を積み重ねることで、少しずつできることが増えていきます。
東野圭吾の小説『クスノキの番人』には、「人々の願いを受け止める特別な木」として、ある秘密を持った(ネタバレになるので詳しく書けませんが・・・)神秘的なクスノキが登場します。この樹は、主人公や周囲の人々の心を癒やし、成長を促す重要な象徴として描かれています。
当院にお越しの際は、是非このクスノキをご覧ください。幹に手を当て、1年中青々と枝に茂る葉を眺めてみてください。この木を支える根の広がりを感じることで、きっと新たな力をもらえるはずです。