私がリハ医になった理由

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
私が学生の頃のことです。 進路を決める前に自分で好きな科を4つ選んで実習に行くことになっていました。私は、父が整形外科医だったのと、自分も大学時代にスポーツをやっていて興味があったので、まず「整形外科」を選び、それから「神経内科」「総合診療内科」と3つまで決まりました。あと1つはどうしようか?となった時に、「リハ科がおもしろいらしいよ」と聞きまして、これは神経や骨にも関係がある科だからいいんじゃないだろうか、とも思ったので、4つ目に「リハビリテーション科」を選んだわけです。

こうして「リハビリテーション科」の実習に入ったのですが、この「リハビリテーション科」というのは何をやっている科なのか、よく分からない科でした。見ていると、レントゲンを撮ったり、薬を出したり…いろんなことをちょっとずつやっているのですが、結局のところ何をやっているのか、よく分からない。

ある時、家屋調査に同行する機会がありました。家屋調査というのは、退院前に患者さんの家を実際に見に行き、必要な改修の提案などをするイベントのことです。その家屋調査には、リハビリ科の主治医も来ていました。私は「わざわざ医者が来る必要があるのだろうか?」と思っていたのですが、その医者が、トイレの手すりの位置を決めるのに、「ここだ」「いやここだ」と言って、理学療法士さんと半ば喧嘩みたいになりながら議論を始めたのです。その真剣な姿に衝撃を受けました。自分の知らない世界のことをやっている医者がいる。しかも、患者さんや家族の方はすごく喜んでいる。何か、世の中の、求められているけれどあまりみんなに知られていない仕事を、このリハビリの医者というのはやっているんだと。学生ながらになんとなく分かって、そして、本当におもしろそうだ、と思ったのです。
その後いろいろと話を聞いて、どうもリハビリの医者というのは、治療をするというよりも、「患者さんの生活を見ている医者」なんだなということが分かってきました。
医療の世界は、縦割り、臓器別などと言われたりしますが、リハビリの医者というのは、それを横につないで見るような、その患者さんの生活や人生を見て一緒に考えていくような、一言で言うと「生活再建」のための医者です。
病院にいると、病気が治ったら退院して終わり、と思ってしまうのですが、患者さんには生活をしている場があるわけで、本来はそこへ戻してあげる、生活が軌道に乗るところまでが医療の仕事であり、責任だと思います。リハビリ科の医者というのは、そこのところを中心にやっている、医療と介護の架け橋になるような存在です。それで、「これはいい仕事だ」と思って、医局の門を叩いたのが始まりでした。

先日厚生省の資料を見たのですが、医者が一番足りていない科はどこか、という調査の答えが、「リハビリテーション科」でした。救急医よりも足りていないということです。日本は今急速に高齢化社会に向かっており、地域からもっとも必要とされるのがこういう仕事です。あまり人気のある科ではないですし、リハビリテーション科の講座がある大学もまだ少ないのですが、もっと多くの人がこの仕事のことを知って、こういう仕事をしたいと思ってくれればいいと思っています。