リハビリテーションという言葉

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
私が小学校6年生の時、当院が開業しました。(1986年) 友達に「お父さんは何の病院をやっているの?」と聞かれ、「リハビリだ」と答えると、皆に「何それ、知らんよ」と言われました。言うのがとても恥ずかしくなり、聞かれるのが嫌だったことを覚えています。まだリハビリ病院が別府、道後や熱海などの温泉地にしか無かった時代です。
2001年に私が医師になった時、「何科に行くの?」と友達に聞かれ、「リハビリ科に行こうと思う」と言うと、「へえー、珍しいね」と言われました。医学生の認識もそんなものでした。母校のリハビリ医学講座に入局し、大学病院や関連病院で6年間学んだ後、広島に戻りました。その時、リハビリ以外の診療科のいろいろな先生に、「これからはリハビリの時代だぞ。大事な仕事だ、頑張れよ。」と言われました。

以前に比べると「リハビリテーション」の認知度や理解度が格段に上がり、その言葉もすっかり定着しました。最近の小学生はリハビリという言葉を知っているでしょう。「○○リハビリ病院」や「○○通所リハビリ」という看板を目にすることも増え、一方で「リハビリマッサージ」や「リハビリデイサービス」、さらには動物に対する「動物リハビリ」という言葉まで登場しました。広く使われるようになった一方で、本来「リハビリ」というのがどういう意味だか分かりづらくなった感じがします。

 

リハビリテーション(rehabilitation)の語源は、「re- (再び) –habilis(適した、ふさわしい) -ation(にすること)」です。中世では「身分・地位の回復」、「破門の取り消し」、近代では「無実の罪の取り消し」、「名誉回復」、「復権」、現代では「犯罪者の社会復帰」、「政治家の政界復帰」など、広い意味で使われています。(上田敏:目で見るリハビリテーション医学)

地動説を唱えて破門されたガリレオに、350年後ローマ教皇が謝罪した際にも「リハビリテーション」という言葉が使われました。このように語源的には、「人間らしく生きる権利の回復」という広い意味を含んでいます。

「リハビリ」という言葉が病院で使われる時は「入院リハビリ」や「外来リハビリ」のように、病棟やリハビリ室で行う機能訓練や生活訓練を差す事が多いですが、在宅や施設で使われる時にはレクリエーションやマッサージも含め広い意味で使われているように思います。また「職業リハビリ」や「災害リハビリ」というのもあります。使われる時と場合により意味が異なり、語源的には間違っているとも言えません。中には諸外国では「リハビリ」と呼ばない事まで、我が国では「リハビリ」と呼んでいるかもしれません。
訓練などの「手段」だけでなく、生活を再建する、全人間的復権を果たすという「目的」まで「リハビリテーション」という外来語のまま使用されているため、その言葉にいろいろな意味を含みます。言葉の問題は解決しそうに無いので、我々専門職が「リハビリ」という言葉を使う時は、「このリハビリというのは…」と詳しく説明しなければならない場面もあるでしょう。