皆で力を合わせて対策を

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
1月に入ってから全国的にインフルエンザが猛威を振るっています。学校や病院・施設でのインフルエンザによる集団感染のニュース報道が相次ぎ、患者さんをお預かりしている立場としては、神経質にならざるを得ません。感染症は院内に持ち込まないことが原則ですが、インフルエンザのウイルスは目に見えず、対策を行ってもどこから院内に入ってくるか分からないため大変です。
 昨年はインフルエンザなどの季節性感染症が入院患者さんから1人も出ませんでした(院長ブログ2018年6月参照)が、今年は過去最高の感染者ということもあり、同じようにはいきませんでした。まだピークを迎えたばかりですので、引き続き職員やお見舞いに来られるご家族に、体調管理や手指消毒等の感染予防を例年以上に呼びかけています。
インフルエンザはくしゃみや咳などの「しぶき(飛沫)」に含まれるウイルスを吸い込んだり、またウイルスが手などに付着し、その手を自分の鼻や口に持っていくことで感染したりします。ウイルスは乾燥した環境では長時間生き続けることが出来るため、乾燥している冬場は特に広がりやすく注意が必要です。インフルエンザがやっかいなのは、感染力が非常に強いことだけではなく、症状が出現する1~2日前から感染力を持っていることです。「熱や症状が無いから大丈夫」とは言えません。症状の有無にかかわらず、マスクを正しく装着し、インフルエンザウイルスに有効なアルコール手指消毒剤を正しいタイミングで使用することが、最大の対策になります。
手指衛生の効果を初めて実証したのはハンガリーのゼンメルヴィアスと言われています。1840年代に彼はウィーンにある総合病院に産科医として赴任しましたが、そこでは産褥熱(お産の後の38度以上の発熱)による母体死亡率が約10%と極めて高い状況にありました。ゼンメルヴィアスは産褥熱の原因が医師の手に付着した有害な粒子ではないかと疑い、「さらし粉」、つまり次亜塩素酸溶液に手を浸してから分娩介助を行うことをスタッフに義務付けたところ、死亡率が激減しました。
 その頃細菌の存在は知られていましたが、細菌が原因で感染症になることを発見したロベルト・コッホが生まれたのは1843年です。細菌による感染症はまだ医学界でも認知されておらず、ゼンメルヴィアスは懸命に主張しましたが、同僚や上司からは厳しい批判を受けました。手指衛生の重要性が認められるようになるのは、それから100年以上後のことです。
当院では感染対策委員会が、「天使の手 洗わなければ悪魔の手」というスローガンで手指衛生を推進してきました。患者さんに直接触れてケアやリハビリを行う我々にとって、手指消毒は当たり前のことですが、そのタイミングがズレてしまうと、ウイルスをもらうことも反対に手についたウイルスを広げることもありえます。手指衛生は基本的事項ですが、最大の予防策とも言えます。
これだけ世間で蔓延していると、外部から持ち込まれることは容易に想像できますし、自分や相手に症状がなくても、「もしかしたら感染しているかもしれない」と思って対応する必要があります。そのため面会に来られるご家族の協力も欠かせません。
我々・患者さん・そして面会に来られるご家族、皆が意識を高め協力を得ながら対策を行わないと、目に見えないものを防ぐことはできません。もうしばらく皆様のご協力を頂きながら対応していきたいと思いますので、ご理解の程よろしくお願いします。