備えあれば…

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
今年は広島の街に色がありません。例年この時期はマツダスタジアムに人が溢れ、新聞や地元のテレビは真っ赤に染まっています。スタジアムに向かう人だけでなく、街を歩く人やお店の店員さんまでも、レプリカユニフォームや帽子などのカープグッズを身に着け、街中が応援しています。野球シーズンが終わると佳境を迎えたJリーグサンフレッチェの紫色の季節です。またバレーボールJTの緑色や、今年バスケットボールB1に昇格したドラゴンフライズのオレンジ色など、昔からスポーツ熱が高い広島には、例年であればこれらの色が溢れていたでしょう。
 今週からプロ野球が始まります。ファンの応援のない試合でもそれなりに楽しめますが、心にポッカリと穴が開いたような気持ちは拭えません。皆で一緒に応援し、勝つ喜び、負けると悔しがり、優勝すると涙する。広島にとって、かつての日常はスポーツとともにあったことを実感します。
 ついこの前までは、現在の状況は想像すらできませんでした。
いろいろな規制が解除され、徐々に街中は「コロナ前」の人出に近づいてきています。しかし①人との距離をとる、②マスクをする、③手指消毒をする、という3原則が守られないと、東京や北海道、福岡のように、再び感染者が増加します。治療薬やワクチンが無い現在、これを徹底するしか方法がありません。緩めては(感染者が)増え、増えてはまた締める。今後予想される第2波・第3波は大きな波ではなく、このような状況が続いていくのでしょう。
 この蒸し暑さで、マスクをしていると体感温度が上がります。これから我々は、夏場に全員がマスクをつけて仕事をするという、経験のしたことがない夏を迎えます。前例はなく、どのように感染予防をしていけばよいのか、自分たちで道を見つけていかなければなりません。
「失敗学」「危険学」を専門にしてきた東京大学名誉教授の畑村洋太郎先生は、国土交通省の東北地方整備局「東日本大震災の実体験に基づく災害初動期指揮心得」を引き合いに出し、備えの重要性を述べておられます。
…その心得の冒頭にはこう書かれています。「備えていたことしか、役には立たなかった。備えていただけでは十分ではなかった」。(中略)組織の目的をみんなで共有し、いろいろなことを考え抜いておけば、何か起きたときに実行できる。もちろん何から何まで準備しようとすると、際限なくお金がかかるし、人も必要になります。しかし、考えた上でやらなかったことと、考えもしなかったことは違うんです…。
(畑村洋太郎:日経ビジネス2020年5月より抜粋)
いろいろな事態を想定し、何かあったらこうしようと、毎日試行錯誤が続いています。受付や訓練所の工夫、食堂やトレーニング機器のビニールシールド設置、中庭の活用など、現場にはこの3か月間「感染制御をしながら医療・介護を提供し続けよう」と頑張ってきた工夫が随所に見られます。もちろんこの先何事もなく収束してくれることを願うばかりですが、いつの日かコロナが去った後、皆で必死に考え備えてきた我々は、きっとレベルアップしているでしょう。
受付
受付
作業療法室
作業療法室
食堂
食堂
トレーニング機器
トレーニング機器
中庭
中庭