新しいコミュニケーションの形

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
4月から5月の緊急事態宣言の期間中、病院だけでなく各地の通所リハビリ施設でも、新型コロナウイルス感染者のクラスター(集団)発生が起きました。感染リスクを避けるため、やむを得ず営業中止にする施設や、利用を自粛する動きが見られました。幸いなことに、当法人では何とか営業が継続できましたが、それでも短時間通所リハビリでは利用者の自粛割合が最大60%に上りました。その後徐々に利用者は戻ってきましたが、お互いに気を遣って会話は少なく、かつての賑わいはありません。「密」にならないよう利用時間を制限し、それぞれがビニールシールドで隔てられたなか黙々とリハビリを続けています。無観客のプロ野球の試合のように、その息遣いやリハビリ機器の音が響いています。
 6月の体力測定の結果を見ると、外出自粛の影響で体力が落ちている方はおられましたが、いずれも想像していたほどではありませんでした。いつにも増して自主トレーニングを自宅で頑張られた方が多かったからかもしれません。一方で認知機能やコミュニケーション能力など、頭の働きや精神面についてはご高齢の方ほど低下を感じます。
先日学生さん相手にWEBで3時間の講義を経験しました。全てが画面越しであるため、最初はうまくいくかどうか心配でしたが、慣れてくると違和感がなくなり、コミュニケーションの距離も縮まった気がしました。グループワークもできて、技術の進歩に驚きました。
 このような方法は、確かに感染リスクがなく安全で、しかも移動を伴わないため効率的です。当院でも全体朝礼や研修が動画を用いたものに変わり、WEBを用いた外部とのテレビ会議が増えました。リハビリテーションにおいても、退院後の動作確認や自主トレ指導、認知訓練、言語訓練など、画面を通じて出来そうな部分はありそうで、新たな可能性を感じます。
一方で、画面を通じてのコミュニケーションでは、相手がどう感じているのか、一生懸命聞いてくれているのか、疲れているのか、その雰囲気や様子を感じることは困難です。またお互いが直接コミュニケーションをとる時のような緊張感は感じません。
 学校の休校期間中、子育て世代の方が「学校があるだけで、子供は朝早く起き、着替え、頭のスイッチが入る。毎日友達と一緒に学び、コミュニケーションをとり、ご飯を食べ遊ぶ。しかしそれが急に無くなると、次第に生活に張りがなくなってくる。今回学校の偉大さがよく分かった」と言っていました。これと全く同じ内容を、先日通所リハビリのご家族から聞きました。
 確かに高齢の方にとっては、仲間やスタッフと直接コミュニケーションをとることが頭の刺激になるだけでなく、通所で皆と「集う」こと自体が生活に適度な緊張感を与えてくれていたのでしょう。久しぶりの通所リハビリは、休み明けの学校の教室のように、お互いが直接会うだけで元気になっているように見えます。
都心や大都市を中心に、感染者が再び増加しています。この波は当分続きそうで、我々は従来の直接的なコミュニケーションと、デジタルツールを用いた画面越しのコミュニケーション方法を、目的に応じて上手く使い分けていくことが必要になるでしょう。
 感染症のリスクを抱えながらも、お互いが支え合い元気になれる“場”をどのように提供していくか。新しいコミュニケーション方法へのチャレンジが続きます。