これからの地域を支える互助活動

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
高度成長期の日本を引っ張ってきた「団塊」の世代は、あと10年もすると皆75歳を超えます。その時、日本の75歳以上の人口の合計は、現在のオーストラリアの人口とほぼ同じ2,200万人に達するそうです。地域で安心して生活するためには、「個人を地域の力全体で支援する仕組み」が必要ということで、国から提唱されたのが「地域包括ケアシステム」です。
これは簡単に言うと、「普段生活している日常生活の圏域(ほぼ中学校区に相当)の中で、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する仕組み」のことです。しかも国が一律に仕組みを決めるのではなく、その地域ごとに自分たちで仕組みを作ることになっています。また、そのためには、「自助・互助・共助・公助」という4つの支援が必要と言われています。
医療保険や介護保険などを利用した我々専門化による制度化された援助は「共助」にあたり、必要な生活を保障する公的な福祉制度は「公助」にあたります。しかしそれだけでは、サービスを必要とする高齢者が多すぎて、費用や人材の面からも、生活に必要なサービスが到底行き渡りません。「自分の事は自分でやる、自分たちの事は地域でやる」ことを前提にしないと、今後の地域は成り立たなくなるという事です。まずは、高齢になっても出来る限り自分で自分を支える「自助」と、近隣の助け合いやボランティア、独居高齢者の見守り、外出支援、家事援助などの地域でお互いに支えあう仕組み「互助」が必要です。
先日、地元地域の「互助」組織である、シルバーネットの皆さんが当法人の見学に来られました。75歳以上の参加者も多いと聞いていたので、見学中に転ぶかもしれないので注意喚起が必要だな…と思いながら会場のドアを開けましたが、そんな心配には及びませんでした。そこには元気あふれる60名の参加者が座っておられ、そのにぎやかで元気な雰囲気にとても驚きました。質問もたくさん出て、熱気のある見学会でした。
参加者と話をしながら、私が小さい頃に地域の花見や運動会、花火大会などの、「子供会の世話をしてくれていた近所の大人たち」の姿を思い出しました。他の家の子供もよく面倒を見てくれ、時には褒めたり叱ったりしてくれました。自分に直接関係ない事でも一生懸命になってくれました。年齢的にはその人たちが「団塊」の世代で、ちょうど見学に来られた方々です。この世代の人たちの元気さや団結力は今も変わらず、地域の「互助」活動を皆で支え合いながらやっていくだろうと思いました。しかし同時に、果たしてこのパワーが私たち団塊ジュニア世代やそれより下の世代にあるだろうかと、少し不安になりました。
リハビリは主に個人の「自助」力高めるために提供されますが、これからは地域の組織や行政と一緒になって行う、地域の「互助」力を高めるリハ活動も大切になっていくでしょう。団塊世代のパワーと連帯感が残っている間に、次世代の自助・互助の仕組みを作ってしまわなければなりません。現在の共助の担い手であるそれより下の世代は、元気な団塊世代から学ぶ事がまだまだ多くありそうです。