人生の鉄人

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。

 「鉄人」といえば、元カープの衣笠祥雄選手のように頑強な身体を持つ人や、陸上ハンマー投げの室伏選手のようにストイックでたゆまぬ努力を続けた強い意思を持つ人のイメージがありますが、私の世代では、「和の鉄人」道場六三郎さんを思い浮かべる人も多いでしょう。

 

 道場さんは30年前、俳優の鹿賀丈史さんのオープニングの名セリフ、「私の記憶が確かならば…」で始まる超人気テレビ番組「料理の鉄人」に出演し、毎回“キッチンスタジアム”で挑戦者とぶっつけ本番の料理バトルを繰り広げていました。その磨かれた技の数々や、伝統にとらわれない和食を生み出す姿に、多くの視聴者が魅了されました。午後11時台にもかかわらず平均視聴率が15%もあった1990年代の伝説的な番組で、私の世代で道場さんを知らない人はいないでしょう。

 しかし現在93歳の道場さんが、まだ現役でお店の厨房に立ち、毎月の献立を決め、さらに90歳を過ぎてからYouTubeチャンネル「鉄人の台所」の配信を始めたという最近の活躍をご存知な方は少ないかもしれません。背筋をピンと伸ばし、元気な姿勢でキッチンに立つ姿は、昔の道場さんそのままです。これからも元気に料理を作り続けようと健康にとても気を配り、週2回のゴルフや朝食前のウォーキングをこなし、歩きながらショーウィンドウに映る自分をチェックして“姿勢”には最も気をつけておられるそうです。

 

 「鉄人の台所」では、身近な食材を使った簡単にできる家庭料理が題材です。奥様を亡くされてから、家でおかずの用意から片付けまでするようになり、少ない油で出来る揚げ物や、冷蔵庫の食材を使うメニューなど、日常で新たに気づいた知恵を詰め込んだ番組を心がけ、チャンネル登録者数はなんと20万人です。

 鉄人時代と同じく撮影はぶっつけ本番。献立を作っている最中に突然アイデアが閃くことや、視聴者の反響が大きかったと聞くとやる気に拍車がかかります。次は何を作ろうかと考える時間も楽しく、新しい「挑戦」にやりがいを感じているそうです。新しいことにどんどん挑戦し、良いと思ったものは積極的に取り入れる道場さんの姿勢は、昔からずっと変わっていません。かつては日本料理には馴染みのない食材を使って様々な創作料理を生み出す姿を「日本料理界の異端児」と皮肉られることもありましたが、今ではこれが元気の秘訣といえるでしょう。

 若い視聴者が多いYouTubeの配信が自分の世界を広げてくれました。今の若い人たちがどんなものが好きなのかリサーチしていくうちに新しい献立が浮かんできます。人はいくつになっても慢心することなく、向上心を失わないことが大切です。面子やプライドにこだわって他人から学ぼうとする意欲が無くなればそこで成長もストップしてしまうでしょう。

 自分の知らないことを教えてくれる人は、すべて師だと考えているので、若い衆の意見にも耳を傾け、料理番組のレシピを見て参考にすることもあります。プラスに思えることは積極的に受け入れ、フラットな考え方でいると、弟子達との関係もスムーズになり、笑顔で働けます。そこからさらにおいしい料理が生まれることは間違いありません。料理も人も、「交わってこそ進化がある」と思うのです…。

 

道場六三郎「91歳。一歩一歩、また一歩。必ず頂上に辿り着く」KADOKAWA・2022年

 4月からフレッシュな新人たちがたくさん入社してきます。変わることは進化すること。走り続ける「人生の鉄人」の姿勢から多くのことを学んで欲しいと思います。そして私達のような職場の先輩達も、若い人たちとしっかりコミュニケーションを取り、謙虚な姿勢で多くのことを彼らから学びたいと思います。